ここ数年で、Azureの入門書も少しずつ増えてきました。
そこで今回は、Azureに5年以上触れてきた私が、初学者向けとうたっている3冊を実際に読んで比較してみました。
これからAzureを学び始める方が、自分に合う1冊を選ぶ参考になれば幸いです。
まず結論:最初の1冊におすすめのAzure入門書
最初に結論を書くと、実務でAzureを使う前提で最初の1冊を選ぶなら『Azureの知識地図』が最もおすすめです。
一方で、非エンジニアの方など、まずはAzureの全体像をつかみたいなら『Microsoft Azureのしくみと技術がこれ1冊でしっかりわかる教科書』が向いています。
手を動かしながらAzureを学びたい人には、『さわって習得 Azure基礎からのインフラ構築』がおすすめです。
3冊の違いをざっくり整理すると、次の通りです。
| 書籍名 | 向いている人 | 特徴 | 最初の1冊として |
|---|---|---|---|
| Azureの知識地図 〜クラウドの基礎から実装・運用管理まで | 実務でAzureを使いたい人 | 実務・設計まで見据えた入門書 | ◎ |
| Microsoft Azureのしくみと技術がこれ1冊でしっかりわかる教科書 | Azureの全体像をやさしく知りたい人 | 図解が多く、超初心者向け | ○ |
| さわって習得 Azure基礎からのインフラ構築 | 手を動かして学びたい人 | ハンズオン中心の実践寄り | △ |
以下で、それぞれの3冊をもう少し詳しく見ていきます。
Azureの知識地図 〜クラウドの基礎から実装・運用管理まで
どんな本か
『Azureの知識地図』は、Azureの公式ドキュメントに書かれていることを理解できるようになることを目指した、実務寄りの入門書です。
Azureサービスの概要を広く押さえつつ、設計や運用、学習の進め方にも踏み込んでいるのが特徴です。
Azureを今後実務で使っていく人に向いている入門書だと感じました。
良かった点
特に良かったのは、単なるAzureサービスの紹介で終わっていないことです。例えばApp Serviceでは、「新しくApp Serviceプランを作るべきか」「既存のプランに追加するべきか」といった、実際に運用で迷うポイントにも触れられていました。初心者向けの本でありながら、実務を意識した視点がかなり強いです。
また、「4.3 Azureを実務で使うためのよくあるアーキテクチャを押さえる」も印象に残りました。CAFのような設計の考え方から、具体的なシナリオに応じたAzureサービスの組み合わせまで説明されており、今まで登場したAzureサービスをどう組み合わせるのかを知れるのは他の入門書にない強みです。
さらに、「第5章 Azureの知識の深め方を知ろう」では公式ドキュメントの読み方やAzure資格の取得にも触れられています。次の学習につなげやすい構成になっている点も親切で良かったです。
3つ用意されているハンズオンも非常に丁寧で、知識がなくても取り組みやすいのが好印象でした。
注意点
「2.1 Azure上にネットワーク環境を作りたい」ではAzure Firewallのセキュリティ規則や仮想ネットワークのルーティングなどが登場するので、ネットワークやセキュリティの知識がないと少し理解に時間がかかるかもしれません。
また、「第3章 AzureのPaaSを知ろう」では、データ分析やIoTなど、全ての人に必要とは限らないサービスの紹介もあります。
ただ、これらは欠点というより、Azureという広い分野を扱う本ならではの特徴です。巻頭に「本書の地図」も用意されているので、地図や目次を見て必要なところから読むのがおすすめです。
どんな人に向いているか
これから実務でAzureを使う予定がある人には特におすすめです。
Azure初学者はもちろん、AZ-900を取得したものの実務とのつながりがいまひとつ見えていない人や、知識に偏りを感じている中級者にも向いています。
非エンジニアにもおすすめできる本ですが、完全なIT未経験者には一部難しく感じると思います。特にネットワーク周りは最低限の前提知識があったほうが読みやすいでしょう。
Microsoft Azureのしくみと技術がこれ1冊でしっかりわかる教科書
どんな本か
『Microsoft Azureのしくみと技術がこれ1冊でしっかりわかる教科書』は、オールカラーの豊富な図解を使って、Azureの主要サービスの概要を理解するための入門書です。
この本は、Azureの全体像をやさしく掴むための1冊という位置づけです。クラウドやAzureにまだ慣れていない段階で、まずはどんなサービスがあるのかをざっと知りたいという人に向いています。
良かった点
この本の一番の強みは、とにかく見やすくてわかりやすいことです。フルカラーで、図を豊富に使いながら説明してくれるので、クラウドやAzureに慣れていない人でもとっつきやすいです。
各サービスの役割や全体像を把握するにはちょうどよく、クラウドやAzureの完全初心者、非エンジニアでも読みやすいのが大きな魅力です。
また、本記事執筆時点ではかなり新しい入門書で、AI系の新しいサービスにも触れられていました。
注意点
一方で、ハンズオンはなく、設計や運用の話も比較的少なめなので、この本だけで実際にAzureを使いこなせるようになるわけではありません。あくまで全体像をつかむための本と割り切ったほうがよいです。
読み終えた後は、他の書籍や公式ドキュメントで実際に手を動かしてみるのがおすすめです。
また、DNSの説明など一部の箇所は、紙面の都合か、情報がやや詰まっているように感じました。とはいえ、短いページ数で幅広いAzureサービスを扱っていることを考えると、かなりうまくまとめられていると思います。
どんな人に向いているか
Azureの全体像をやさしく理解したい人に向いています。
Azureの主要サービスの概要を知りたい非エンジニアや、AZ-900の受験を考え始めた人にも入りやすい1冊です。
さわって習得 Azure基礎からのインフラ構築
どんな本か
『さわって習得 Azure基礎からのインフラ構築』は、ハンズオンを通してAzureサービスを触りながら学んでいく実践寄りの本です。
実際に構築しながら学んでいくタイプの本なので、座学だけではイメージしにくい部分も把握しやすくなっています。手を動かしながらAzureを学びたい人向けの1冊です。
良かった点
この本の良さは、実際に手を動かす前提で書かれていることです。
特に、6章のAzure OpenAIを使った簡易RAGのハンズオンはわかりやすく、私自身も比較的スムーズに進めることができました。RAGを作りながら、どんなAzureサービスを組み合わせるのか、どんな検索手法があるのかをざっくり学べるのは良かったです。
また、7章でFinOpsに触れている点も印象的でした。Azureの入門書はサービス紹介や構築手順に寄りがちですが、本書は運用時のコスト最適化という実践的な観点も扱っています。これは他の入門書にはあまりない視点です。
注意点
一方で、全体としてはかなり人を選ぶ本だと思いました。
タイトルに「インフラ構築」とある通り、「第4章 IaaS型のWebアプリケーション構築」では、Windows Serverの設定などインフラエンジニア寄りの内容が中心です。実際に私もハンズオンを試しましたが、書籍の説明と実際の画面が少し違っていたり、Windows Server側の設定で詰まったりして、本質と関係ないところで時間を使ってしまいました。
一方で、「第5章 PaaS型のWebアプリケーション構築」では、JavaScriptやPythonを使ったアプリをApp Serviceにデプロイするハンズオンです。こちらはAzureそのものよりプログラム側の説明が多く、アプリケーション開発者寄りの内容でした。
このように、4章はインフラエンジニア寄り、5章はアプリ開発者寄り、7章は運用管理者寄りという感じで、章ごとに想定読者が少し変わる印象があります。人によっては読みづらく感じるかもしれません。
どんな人に向いているか
読むだけではなく触って覚えたい人には向いています。
特に、AWSなど他のクラウド経験がある人や、Azureの基礎をざっくり理解したうえで手を動かして学びたい人には合うと思います。
一方で、最初の1冊としてはあまりおすすめしません。完全なAzure初心者や非エンジニアには、少しハードルが高い印象でした。
まとめ
3冊とも「Azure初心者向け」とされていますが、実際に読んでみると特徴はかなり違いました。
実務も見据えて最初の1冊を選ぶなら『Azureの知識地図』、やさしく全体像をつかみたいなら『Microsoft Azureのしくみと技術がこれ1冊でしっかりわかる教科書』、手を動かしながら学びたいなら『さわって習得 Azure基礎からのインフラ構築』が向いています。
自分の学び方や前提知識に合わせて、合いそうな1冊を選んでみてください。