C#の体系的な学習書として定評のある『独習C#』シリーズの最新版である第5版はC# 10.0に対応し、基礎から高度な機能まで網羅しています。
ただし、完全な初心者向けではなく、基礎を終えた初中級者向けです。
この記事では、その特徴や良かった点、注意点、他の入門書との違いをレビューします。
書籍の概要と特徴
本書の基本情報を表にまとめました。
書籍名 | 独習C# 第5版 |
著者 | 山田祥寛 |
出版社 | 翔泳社 |
発売日 | 2022年7月21日 |
ページ数 | 680ページ(B5変判) |
対応バージョン | C# 10.0 |
価格 | 4,180円(税込) |
サンプルコード | あり(出版社サイトからダウンロード可) |
『独習C# 第5版』は、C#の言語仕様を網羅的に学べる中級者向けの解説書です。
解説→例題→練習問題の三段構成で、自習でも理解を深めやすい設計になっています。
C# 10.0対応で、global usingやrecord型の改善など、新しめの構文もしっかりフォローされています。
章構成と学び方
本書は全11章構成で、以下のように基礎から応用まで段階的に学べます。
- イントロダクション(C#の特徴や歴史など)
- C#の基本(変数、データ型、演算子など)
- 演算子
- 制御構文(if文、switch、ループ)
- 標準ライブラリ
- コレクション
- オブジェクト指向の基本(クラス、継承、カプセル化など)
- オブジェクト指向の応用(ポリモーフィズム、抽象クラス、インターフェース)
- オブジェクト指向の応用(名前空間、例外処理、ジェネリクス)
- ラムダ式とLINQ
- 高度なプログラミング(スレッド、非同期処理、属性など)
各章は「解説 → 例題 → 練習問題 → 理解度チェック」という流れになっており、読んで終わりではなく、手を動かして理解を定着させられる構成です。
よかった点
本書の魅力は、網羅性と体系性の高さです。基礎文法から高度な言語機能までを一冊でカバーしており、C#の全体像を体系的に理解できます。「辞書的な使い方」にも向いています。
また、C# 10.0の新機能であるglobal usingやrecord型の改善など、比較的新しい文法を学べるのも大きなポイントです。
さらに、各章末には理解度を確認できる練習問題が豊富に用意されており、読んだ内容をすぐに試せるため独学でも定着しやすい構成になっています。
注意点・気になったところ
まず本書は680ページという大ボリュームのため、最初から最後まで通読するには相応の時間と集中力が求められます。実際には、自分の学習状況に応じて必要な章を選びながら進めるのが現実的です。
また、ASP.NET Coreや.NET MAUIといった具体的なアプリ開発フレームワークの解説はほとんど含まれていないため、実際にアプリ開発へ進む際には別の書籍などで補う必要があります。
完全な初心者にとっては取っつきにくい部分もあるので、よりやさしい入門書を挟んでから本書に取り組むほうがスムーズでしょう。
他のC#入門書との比較
代表的なC#入門書を実際に読み比べ、独断で比較してみました。
書籍名 | やさしさ | 情報量 | 実務寄り |
---|---|---|---|
確かな力が身につく C#「超」入門 第3版 | ★★★★★ | ★★☆☆☆ | ★★☆☆☆ |
なるほどなっとく C#入門 | ★★★★★ | ★★★☆☆ | ★★☆☆☆ |
基礎からしっかり学ぶC#の教科書 第4版 | ★★★☆☆ | ★★★★☆ | ★★★★☆ |
独習C# 第5版 | ★★★☆☆ | ★★★★★ | ★★★★☆ |
※「実務寄り」の評価は、開発現場でそのまま活かせる知識や構文(アプリ開発・設計方針など)の有無を基準にしています。
『独習C#』は情報量と網羅性では頭一つ抜けていますが、やさしさの面では他の入門書に劣ります。
基礎を終えた人が次に読む本として最適です。
どんな人におすすめ?
本書は以下のような方におすすめです。
- C#の入門書を読み終えた初中級者
- 他のプログラミング言語を経験していて、新たにC#を学びたい人
- 比較的新しめの文法を体系的に学びたい人
- 辞書的に使える1冊を探している人
まとめ
『独習C# 第5版』は、C#を網羅的かつ体系的に学びたい人に最適な一冊です。
最初の1冊には向きませんが、基礎を終えた後のステップアップ書として非常に優れています。
C#の全体像を理解し、さらに実務で通用する知識を身につけたい方に強くおすすめできます。